翠も甘いも噛み分けて
登校して席に着くなり、幸成は食い気味に翠に問いかけた。英語の先生は授業中、全員に必ず一回は発言させるように当てていく。宿題の答えを黒板に書かせたり、教科書の音読を当てていったりと、ランダムにくるからきちんと宿題をしていないと咄嗟に答えられないのだ。
「うん、もちろんやってるよ」
「ああ、女神がここにいた! スイちゃん頼む、ノート写させて」
幸成が調子のいいことを言って、なんとか翠からノートを借りようとする。これは親しくなってからいつものお約束だ。周囲の席の友達も、このようなやり取りをこれまで何度も見ているだけに誰も反応しない。
「えー、どうしよっかな……って、なんか甘い匂いしない?」
鞄を机の横に掛けるために身体を動かした幸成から、甘い匂いがした。香水や柔軟剤のような人工的な匂いではなく、甘い焼き菓子のような優しい匂い……翠は思わず動物のように鼻をクンクンとひくつかせて幸成の匂いを嗅いだ。翠のその行動に、幸成はもちろんのこと周囲にいたクラスメイトもびっくりして一同がフリーズしている中、翠ただ一人が我が道で匂いを嗅ぎ続けている。
「やっぱ高橋くんから匂うんだけど……ねえ、なんかお菓子持ってる?」
「うん、もちろんやってるよ」
「ああ、女神がここにいた! スイちゃん頼む、ノート写させて」
幸成が調子のいいことを言って、なんとか翠からノートを借りようとする。これは親しくなってからいつものお約束だ。周囲の席の友達も、このようなやり取りをこれまで何度も見ているだけに誰も反応しない。
「えー、どうしよっかな……って、なんか甘い匂いしない?」
鞄を机の横に掛けるために身体を動かした幸成から、甘い匂いがした。香水や柔軟剤のような人工的な匂いではなく、甘い焼き菓子のような優しい匂い……翠は思わず動物のように鼻をクンクンとひくつかせて幸成の匂いを嗅いだ。翠のその行動に、幸成はもちろんのこと周囲にいたクラスメイトもびっくりして一同がフリーズしている中、翠ただ一人が我が道で匂いを嗅ぎ続けている。
「やっぱ高橋くんから匂うんだけど……ねえ、なんかお菓子持ってる?」