翠も甘いも噛み分けて
(ヤバい、私、高橋くんのことが好きかも。今までそんなこと気にしたことなかったのに、もしかしたら高校の頃から……)

 学生時代、幸成と一緒にいるだけでとても安らげた。居心地のよさと、当時のクラスの雰囲気で、恋愛感情というものを無意識に封印していたのだろう。恋愛を意識したら、もし幸成に拒絶されたら、あんな風に一緒にはいられないから……
 そう考えると、当時のみんなの考えにようやく納得がいった。
 自分の恋心を自覚した途端、翠はどうしたらいいのか分からなくなり、枕に顔を埋めてひたすら訳の分からない言葉を口にしていた。

 幸いにも明日は幸成のお店は定休日だ。会う約束はしていないけれど、幸成のことだから、もしかしたら定休日でもお店に来てと連絡があるだろうか。翠はドキドキしながらもいつの間にか眠りに就いていた。

 翌日、翠はいつも通り会社に出勤した。昨日までと違うことといえば、幸成の彼女になったことと、ダイエットを終了したことだ。ダイエット中のお昼ごはんは、サラダとチキンを和えたものを和風ドレッシングをかけて食べるだけだったけれど、今日からは、ごはんにおかず、ぎっしりとお弁当箱に詰め込んだ。

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