翠も甘いも噛み分けて
 食事の準備が整うと、幸成がそれらをトレイにまとめて乗せるとダイニングへと運ぶ。そして自分の席に着くと、翠も向かいの席に座った。

「じゃあ、食おうぜ」
「うん、もうお腹ぺこぺこだよ」

 二人は手を合わせると、出来上がったスパゲティとサラダを口にした。パスタソースは茹で上がったら混ぜ合わせる即席のもので、ツナマヨ味だ。
 スパゲティを口にすると、ようやく緊張が解けて盛られた分をペロリと平らげた。サラダも完食だ。

「お代わり、すぐに作れるけどどうする? あ、でもケーキもあるからなぁ」
「うん、ケーキの分の余力は残しておきたいから、これでご馳走さまするよ。高橋くん、ありがとう」

 翠が器を持って立ち上がろうとした時だった。幸成がそれを制した。

「置いといて。今日は腕、無理させたくない」

 そう言いながら幸成が立ち上がり、翠の分の器を自分の器と重ねてキッチンへと運んでいく。その気遣いが、先ほど会社で浜田から受けたセクハラを嫌でも思い出してしまうと思わなかった幸成は、背後で今にも翠が泣き出しそうな表情を浮かべていることに気づかなかった。

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