翠も甘いも噛み分けて
「ん……んんっ…………ふぅ……」

 キスがだんだん深くなり、翠は立っていられなくなるくらいに蕩けさせられていた。自分でも聞いたことがないような声が口から出て、翠は羞恥から顔が赤らむ。幸成はそんな翠のかわいい声を聞いて、気がつけば翠を抱き上げていた。翠の許可を取らないまま寝室へと連れて行くと、ベッドの上にそっと横たえた。

「がっついてごめん、でももう我慢の限界なんだ……このまま俺のものにしてもいい?」

 寝室は電気が点いておらず、仄暗い。開け放たれたドアから漏れる光が逆光となり、幸成の表情は見えないけれど、その声は熱を孕んでいる。幸成は翠の返事を待っている。もしここで『嫌だ』と言えば、きっと止めてくれるだろう。でも……

「……私、今までずっと太ってたから、誰ともお付き合いとかしたことなくて、その……初めてなの」

 蚊の鳴くような小さい声で、翠が呟いた。その声を聞いた幸成は、翠の頬にそっと触れながら耳元で囁いた。

「俺を、スイの最初で最後の男にしてくれる……?」

 翠にとって、その行為はまだ未知の経験だ。女の子の初めては、高確率で痛いと雑誌に体験談が書かれていたり、女友達からも聞いているだけに恐怖心は拭えない。でも……いずれは経験することだ。それならば、大好きな人──幸成に、自分の一番近くに来て欲しい。

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