翠も甘いも噛み分けて
 ようやくボタンを外し終え、その下に着ているキャミソールとブラジャーをたくしあげると、翠の上半身の肌が露わになる。幸成はゴクリと唾を飲み込んだ。

「スイ……」

 中途半端に服を脱がされて恥ずかしがる翠を見て、幸成はこの幸せを噛み締めている。洋服がしわにならないように、翠の腕から洋服を抜き取り、床へと落とすと、幸成も自分の着ているフード付きのトレーナーを脱ぎ棄てた。十年前より逞しくなった身体は、逆光のおかげで陰影がつき、更に筋肉が隆起して見える。

「柔らかいな」

 幸成は翠の背中に手を回し、ブラジャーのホックを外すと、かろうじで胸元に引っかかっていたカップ部分をずらし、その柔肌に触れた。日に当たらない場所だけあり、肌は白く、触れると幸成の汗ばんだ手のひらに吸い付くように収まった。

「痩せたから、ちょっと小さくなったけど……」
「じゃあ、これから俺の手作りスイーツを毎日食べて、ここを育てないとな」
「あっ……」

 幸成の手の動きに、翠は声をあげる。その声は、さっきと同様に今まで自分が発したことのないものだ。自分でも聞いたことのない声に恥ずかしくなるけれど、幸成はその声を聞きたいがために、翠の身体の至るところに触れていく。翠の身体の全てを慈しむようにキスをすると、その度に翠の身体は大なり小なり跳ね上がり、艶めいた声を上げていた。
 二人の身体が初めて重なり合った時、翠は苦痛で顔を歪めた。けれど翠は、決して痛いと弱音を吐かなかった。幸成はそんな翠が愛おしくて、最奥まで貫いた時、深く口づけした。
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