翠も甘いも噛み分けて
「さ、どうぞ召し上がれ」
コーヒーは、お店と違ってマグカップだ。お皿も恐らく実家から持たされたと思われるレトロな柄のものに、翠はなんだかホッとした。
新築のモダンな造りの家にそぐわない食器、妙なところにこだわらない幸成らしさが垣間見ることができて、翠は笑みを浮かべると、ずっと気になっていたことを口にした。
「ねえ、お店の名前の由来って、なに? VERDEって、英語じゃないよね?」
改めていただきますをして、ケーキにフォークを刺しながら、翠は幸成に質問した。すると、幸成は心なしか顔色がほんのり赤らんだ。
「あ? 店の名前の由来? ……んだよ、これ、言わなきゃダメなのか……」
先ほどまでと一変して、幸成の語気は弱まっている。よほど口にしたくないのだろうか。でもそこで引き下がる翠ではない。キラキラとした目で見つめていると、幸成は観念したのか、大きな溜め息を吐いて、その重い口を開いた。
「……VERDEは、イタリア語で、『緑』を意味する単語なんだ。スイの名前だよ」
ボソボソと呟く幸成の顔が、段々赤らんでいく。
翠はその言葉にびっくりして、手に持っていたフォークをダイニングテーブルの上に取り落としてしまった。金属音が部屋に響き、私は慌ててフォークをケーキの横に並べて置き直すと居住いを正し、幸成の話の続きを待つ。
コーヒーは、お店と違ってマグカップだ。お皿も恐らく実家から持たされたと思われるレトロな柄のものに、翠はなんだかホッとした。
新築のモダンな造りの家にそぐわない食器、妙なところにこだわらない幸成らしさが垣間見ることができて、翠は笑みを浮かべると、ずっと気になっていたことを口にした。
「ねえ、お店の名前の由来って、なに? VERDEって、英語じゃないよね?」
改めていただきますをして、ケーキにフォークを刺しながら、翠は幸成に質問した。すると、幸成は心なしか顔色がほんのり赤らんだ。
「あ? 店の名前の由来? ……んだよ、これ、言わなきゃダメなのか……」
先ほどまでと一変して、幸成の語気は弱まっている。よほど口にしたくないのだろうか。でもそこで引き下がる翠ではない。キラキラとした目で見つめていると、幸成は観念したのか、大きな溜め息を吐いて、その重い口を開いた。
「……VERDEは、イタリア語で、『緑』を意味する単語なんだ。スイの名前だよ」
ボソボソと呟く幸成の顔が、段々赤らんでいく。
翠はその言葉にびっくりして、手に持っていたフォークをダイニングテーブルの上に取り落としてしまった。金属音が部屋に響き、私は慌ててフォークをケーキの横に並べて置き直すと居住いを正し、幸成の話の続きを待つ。