天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
冷蔵庫から新しいビールを取り出し、喉を潤した彼は「ひとつずつ言おうか?」と、イタズラっぽく目を細める。
「笑うとほんの少しできるえくぼに、弓なりになる目、照れたときの顔」
聞いていて恥ずかしくなり、思わず顔が火照ってくる。
「ほら、その顔」
「やめて」
「それから、甘えん坊なところと」
「もういいから!」
体を伸ばして、斜向かいに座ろうとする啓介さんの口を塞ごうとして「キャ」逆に捕まった。
腕の中に包みこまれ、見上げる私の唇に、唇を重ねた彼は「好きだよ」と、甘い声で囁く。
「ホッとするんだ。君をひと目見たときから、心が温まるのを感じたんだよ」
啓介さん……。
「俺の実家は笑い声が響いたりしない、静かといえば聞こえがいいが、冷たい空気が漂う家だ」
体を離した彼は、少し悲しげに微笑む。
「君のような女性も俺の周りにはいなかった」
啓介さんの長い指がそっと、私の頬に触れる。
「まだ足りないか? いくらでも言えるぞ?」
私は左右に首を振った。
「もう十分」
「どうして君と結婚したか。それは君が好きだから」
瞳が熱を帯びている。