天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 重ねる度に、深くなる口づけに夢中になるのはすぐだった。

 頬を撫でられて、「好きだ」と囁かれるうち止めどなく涙が溢れた。

「ごめんな、不安にさせて」

 復讐なんて言いながら、
 ずっとこの声で、こんなふうに甘く囁いてほしかった。

 私は、自分に自信がないばっかりに、簡単に誤解して……。

「好き、よ。啓介さん」

 泣きながら訴えるように愛を告げる私を、彼は少し乱暴なほど強く抱きしめる。

「莉子、……莉子、君が好きだ」

 普段は紳士な彼なのに、私を抱くときはちょっと強引なあなた。

「愛してるよ、莉子」
 そう……。いつも、こんなふうに私を抱いた。

 その度に狂わされて、激しいほどの律動に我を忘れそうになる。

「あ、あぁ――啓介、さん」

 あなたしかいない……。

 悲しみも苦しみも、汗や涙と一緒にすべてを流してしまおう。

 私はやっぱりこの人が好き。

 私を抱き寄せるこの腕も、夢中にさせる唇も、悲しくなるほど好きなの。


 啓介さん。

 私の大切な人、あなただけを愛してる――。

 
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