天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 私と母の言い合いに驚いたのか、乃愛が泣き出した。

「ああ、ごめんね乃愛ちゃん」

 母が慌てて駆け寄り乃愛を抱き上げる。

 どうしよう。一応啓介さんに連絡しておこうかな……。

 でも、今日は午前中からオペだと言っていたから心配かけられない。とりあえずこの場は私だけで乗り切ろう。

 大丈夫、ちゃんと話せばわかってくれるはずだから。

 だって島津のお母さまは啓介さんの味方をしてくれるはずだもの。



 母と出かけた先は、かつて私と啓介さんがお見合いをした料亭の、隣に隣接するカフェだった。

 カフェとはいえ仕切りがあって、大声を出さない限り隣の席に気を使わないで済むだけのゆったりとした席だった。

「料亭の方が安心だけれど、食事をする気にはなれないしね」と母は溜め息をつく。

 現在午後二時五十分。約束の時間は三時らしいがまだ島津のお母さまの姿はなかった。

「お母さん、私は離婚する気はないからね」

 あらためて念を押す。

< 138 / 286 >

この作品をシェア

pagetop