天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 でもすぐに自分が悪いのだと思い返した。今言った通り、そもそもの話、自分が悪いのだ。それ以前に原因を作った鈴本小鶴がと思ったところで、考えるのをやめた。

 誰かを、なにかを、責めたところでどうしようもない。

 ひと言で言うならば、私たちは縁がなかったのだ。

「誤解したまま離婚するところだったんだもの。真実がわかってよかったと思ってる」

「莉子……」

 私を慰めるように、母が私の肩を抱く。

 ――もう、終わったのだ。

「大丈夫だよお母さん。私には乃愛がいるもの」

 そう。私には乃愛がいる。

 腕の中でスヤスヤと眠っているこの子がいる限り、私は泣かずにがんばれる。

 ともすると考えこんでしまいそうになる私を救ってくれたのは乃愛だった。まだ歩けもせずひとりでは生きていけない存在が今、私自身を守ってくれている。

 

 正式に離婚したら次の日からおとといまでの数日間、島津のお母さまが毎日邸に来た。

 啓介さんに言われていた通り母が対応に出て、私は会わなかった。

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