天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
毎日のようにオペをしていたはずが、彼は実家に帰ったあの日以降の手術の予定を入れていなかった。いつの間にかスカウトして連れてきていた優秀な脳外科医に引き継いでいたのだ。
どこまでも頼もしい完璧さに苦笑するしかないが、私は彼に最後にひとつだけお願いをしようと思う。
「お母さん、乃愛を見ていてくれる? 最後に啓介さんと話をしてくる」
再生した綺麗な白亜の病棟。
軽井沢から戻って、今のように山上総合病院を見上げたのは、ほんのひと月と少し前だ。
思い返すのも恥ずかしいが、復讐に燃えていて、やる気満々で睨むように見つめていたのだった。
あのときの私は、自分の気持ちだけで心がいっぱいだった。
でも今は、彼の気持ちばかり考えてしまう。
理事長室の前に立ち、大きく息を吐きく。
気持ちを整えたところでドアをノックした。
「失礼します」
くぐもった「はい」と応える彼の声を聞き、中に入ると、啓介さんはデスクの前に立ち書籍の片付けをしていた。
どこまでも頼もしい完璧さに苦笑するしかないが、私は彼に最後にひとつだけお願いをしようと思う。
「お母さん、乃愛を見ていてくれる? 最後に啓介さんと話をしてくる」
再生した綺麗な白亜の病棟。
軽井沢から戻って、今のように山上総合病院を見上げたのは、ほんのひと月と少し前だ。
思い返すのも恥ずかしいが、復讐に燃えていて、やる気満々で睨むように見つめていたのだった。
あのときの私は、自分の気持ちだけで心がいっぱいだった。
でも今は、彼の気持ちばかり考えてしまう。
理事長室の前に立ち、大きく息を吐きく。
気持ちを整えたところでドアをノックした。
「失礼します」
くぐもった「はい」と応える彼の声を聞き、中に入ると、啓介さんはデスクの前に立ち書籍の片付けをしていた。