天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 でも啓介さんに愛してもらった乃愛に、大きくなってから話してあげられる思い出を作ってあげてほしい。

「乃愛はまだ小さいから、覚えられないとは思うけど」

「わかったよ。たくさん写真を残そう。乃愛の思い出になにか買ってあげて」

 啓介さんが笑顔になる。

「どこがいいかな。水族館はどうだ? 動物園じゃ暑いしな」

「うん、そうね」

 

 三日後。私たちは水族館で思い出作りをした。

 イルカのショーでちょっと濡れて、驚く乃愛をふたりで挟んで自撮りの写真を撮って。歩くペンギンを見て笑って。

 乃愛の記憶には残せないかもしれないけれど、後で話して聞かせてあげられるよう三人でたくさんたくさん写真を撮り、啓介さんは乃愛にぬいぐるみを買ってくらた。

 ゴマフアザラシの赤ちゃんのぬいぐるみは、乃愛が手を伸ばして欲しがったもの。

 最後の一枚はトンネルになった水槽の下で、頬を寄せ合って撮った写真と思い出の品。

 これでもう十分。

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