天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「我が家?」

 彼は苦笑を浮かべながら私を見つめる。

「俺は君と結婚するわけで、君の家と結婚するとは思っていないが?」

 確かにそうだけれど、この結婚は政略結婚だ。

「山上総合病院は今にも倒れそうな貧乏病院なので、関係ないとは言えません」

 私と結婚したら、傾いている病院を父と一緒に立て直してもらわなきゃいけない。啓介さんだってわかっているはずなのに。

「それは謙遜し過ぎだよ」

 でも。本当だから。

 曾祖父の代から住んでいる今の家屋敷も抵当に入っているという。あと半年のうちになんとかしないと、家屋敷を手放さざるを得ない状況だと母から聞いている。

 貧乏には違いないのだ。

「ところで君は国立の有名大学に通うほど優秀なのに、医者になろうとは思わなかったの?」

 チクッと胸が痛む。

「実は、私も弟も血を見るのが苦手で」

 それに病院はどうしても悲しみがつきまとう。耐えられる強さが私にはない。

< 19 / 286 >

この作品をシェア

pagetop