天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 迷ううち、莉子が歩いてきた。

「お久しぶり啓介さん」

 笑顔は変わっていない。莉子は二年前と同じように、花のような可憐な笑みを浮かべる。

「久しぶり」

「今は日本に?」

「一週間ほどな。また向こうに帰る」

「そう、大変ね――。えっと。じゃあ、お元気で」

 このまま行ってしまうのか。

 両手を前で合わせながら小さく頭を下げる彼女を前に、胸の中が騒ついた。

「忙しいのか?」

「え?」

「もし時間があるならどこかでお茶でもと思ったんだが」

 言ってから我に返った。

 彼女には連れがいるから無理だろう。

「すまない。君には連れが」

「ちょっと待ってて」

 小走りに友人のもとに走った莉子は、ふたりに何事か話し、乃愛を抱いて歩いてくる。

 こちらを見ている友人をあらためて注目し気づいた。あの男、雰囲気は随分変わったが、梨子が乃愛の父親だと紹介したホストか。

 胸がざわつく。

 ついさっきまで彼女の幸せを見守ると、余裕だったはずなのに。

「いいのか?」

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