天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「大丈夫。こんな偶然滅多にないから」

 どこかに入ろうとして、梨子が「そこの公園に行きましょう」と言った。

「ああ。そうだな」

 公園と言ってもベンチがあるだけの公園だった。

 とりあえずベンチに腰を下ろすと、梨子の膝の上に座っている乃愛は、俺をジッと見つめる。

「乃愛、パパよ? わかる?」

 パパだと言われただけで、うれしさにハッとした。

「パパだぞ。久しぶりだな、乃愛」

 乃愛と毎日暮らせたのはほんの数カ月だ。

 時間のある限り遊んで本を読み聞かせたが、あの時期の記憶力などせいぜい数週間だろう。覚えているはずがない。

 それでもあえて「覚えてるか?」と聞いた。

「毎日パパと遊んだんだぞ? たかいたかいして」

「そうよ。乃愛。毎日遊んでもらったのに忘れちゃった?」

 キョトンとした顔で俺と莉子の顔を交互に見比べる乃愛を見ていると、熱いものが込み上げた。

「啓介さん、抱っこしてあげてくれる」

「おいで、乃愛」

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