天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 泣かれたらどうしようと思ったが、乃愛は俺に向かって手を伸ばした。

「パーパ?」

「そうだよ。パパだ」

「啓介さん、ときどきこうして乃愛に会ってくれる? 日本に来たとき。暇なときでいいの」

「いいのか?」

 パパだと乃愛に言ってくれただけでも満足しなければと思ったのに。

「もちろんよ。私たちは他人になったけど、乃愛のとって啓介さんはたったひとりの血の繋がった父親なんだもの」

〝私たちは他人〟か。

 浮き足立ったばかりの俺は、たちまちのうちにバカみたいに深く傷ついた。





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