天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 目を合わせると吸い込まれてしまいそうになった。二年という月日の流れを忘れさせる魔法にでもかかったように胸がざわついてしかたがなかった。

 私はあんなに素敵な人の妻だっただなんて、ちょっと信じられないと思う。

 今だって、すれ違う女性たちが振り返って囁き合っている。それくらい彼の風貌はこの都心でも目立っている。

 でも彼はそんな視線に気づかないだろう。自分の見た目にはびっくりするほど無関心だから。

 角を曲がる前に彼は振り返った。

「あ、パパが振り返ったよ。乃愛、ほら手を振りましょう」

 乃愛が手を振ると彼も大きく手を振ってくれた。

 啓介さん、ありがとうね。

 優しい人だから、乃愛に会ってほしいと言う私のお願いに、彼は二つ返事で答えてくれた。

『今度日本に帰ってくるときは連絡するよ。そのときはお土産も買ってこような』

 愛おしそうに乃愛を抱き抱える彼を見ていると切なくなった。

 角を曲がった啓介さんが見えなくなる。

「ママ」

「ん?」

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