天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 危うく涙が込み上げて来そうになり、上を向いた。

「あ、飛行機雲だよ。パパはね、あんなふうに高いところを飛んできたの」

 そしてまた行ってしまうんだって。

 寂しいね。


 啓介さんとの再会をきっかけに、私は再婚について考えるようになった。積極的にというわけではなく、いい人がいれば、というふうに。

 なぜかはよくわからないが、そうしないといけないような気がしたのだ。

 思い立ったが吉日である。首を回して時計を見た。

 午後四時。そろそろ出かける時間だ。今日はこれから製薬会社主催の講演会がある。

「お母さん、今日は懇親会にも参加しようと思うんだけど、乃愛お願いしてもいいかな」

「いいわよ。でもどうしたの珍しいじゃない」

 その手の講演会は懇親会もあるが、私はいつも不参加だった。

「お母さん私ね、少し再婚について考えてみようと思うの。乃愛のためにもね」

「あらそう。わかったわ。じゃあ今夜は乃愛とお風呂に入ろうかしら」

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