天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 母は再婚についてはなにも言わずにっこりと微笑んだ。


 今日のテーマは発性脳血管攣縮(スパズム)の治療プロトコール。

 いつもながらタイトルをチラ見しただけで、拒絶反応を起こしそう。

 講演を聞いたところで理解できる自信はないが、私は一応副理事長だ。わからないなりに参加するのも仕事のうちである。任せきりでMRとドクターの間におかしな癒着が起きないよう、日頃から関わっておくのも私の務めであるので、講演会はなるべく参加している。

 当院からも数人のドクターが参加する。皆でタクシーに乗り合わせて向かうが、私は内科の女性医師、真知子先生と同乗した。

「山上副理事長が懇親会に参加は珍しいですね」

「少しずつ他所の皆さんとも交流を深めないといけないと思いましてね」

「そうですよ。まだお若いんだから。今日は飲みましょう」

「はい。よろしくお願いします」

 その意気ですよと笑う彼女は、以前瑠々が頼んだ調査会社が啓介さんの浮気相手だと指摘した写真の女性だ。

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