天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 焦って即答してしまい、カッと顔が赤くなるのが自分でわかる。

 不満なんてあるわけない。今後お見合いを重ねても、啓介さんより素敵で条件のいい人なんているとは思えない。

「じゃあ、なにが引っかかっているの?」

 だって信じられないもの。なぜ王子様がこの縁談を?

 メリットなんてないのに。

「あの……、啓介さんはどうしてこの話を受けようと思ったのですか」

 彼はにっこりと口角を上げる。

「君が気に入ったから」

 えっ、そ、そんな。

 ますます顔が熱くなり、両手を頬にあてた。

「か、からかわないでください」

 あははと笑った啓介さんは「からかってないよ」と手を左右に振る。

「まぁ、そうだな。一目惚れ。とでも言っておこうか」

 ついに耐えられなくなって顔を覆いながらうつむいた。

 そんなの嘘だわ。

 私は美人じゃない。今日だってメイクさんに頼んで大人っぽくしてもらったつもりなのに、やっぱり仕上がった私に向けられた言葉は『かわいい』のひと言だった。

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