天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 二年経って、やっと気持ちが落ち着いてきたのに。

 そんな複雑に揺れる親の気持ちも知らず――。

 頭の上にある水槽で、空を飛ぶように泳いでいくペンギンを乃愛は興奮しながら見ていた。

 

 そして私たちはコルヌイエに戻った。

 チェックインを済ませて着替えを買いに行く途中、泊まる旨を母に伝えると、母は笑った。

『莉子、やせ我慢をしないで、全部正直にぶつけなさい。素直な気持ちをね。後悔しないように』

 素直な気持ち、か。

 母は『啓介さんには遠慮しなくていいのよ』と言うけれど、私の正直な気持ちをぶつけたりしたら、彼を困らせるだけなのに。

「あとは大丈夫か?」

「うん。一泊だけだから」

 とは言っても啓介さんは何着も乃愛に服を買ってくれたから両手は大きな紙袋で塞がっている。

 だから乃愛は私と手を繋ぎ真ん中にいる。

 ちょこちょこと啓介さんを見上げてご満悦だ。

「よかったねパパにたくさん買ってもらって」

「たっち、たっち」

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