天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
コルヌイエに来て、スイートルームに決めた時から俺は、莉子と乃愛を連れてくると決めていた。
最初から彼女の見合いを妨害するつもりで、レストランのあるフロアラウンジで入口を気にしながら新聞を広げ待っていた。
莉子は知らないが、昨日彼女の母、理事長には気持ちを打ち明けてある。
『わがままを言って本当に申し訳ありません。どうしても彼女とやり直したいんです』
言うだけ言って頭を深く下げた。
もちろん快諾してもらえるとは思っていない。自分勝手だという自覚は十分にある。
それも許しを得るまで、たとえ何年かかっても頭を下げ続けつしかない。
『啓介さん頭を上げてちょうだい』
確認したいと言われ、小鶴や母がどうしているかと聞かれ、正直に答えた。
京都にいる母は入院こそしていないが、医師の管理下にある。
それでも、まだ不安定ではあるが、少しずつ感情の起伏はなだらかになっているようだ。父も兄も、そして俺も可能な限り連絡は取っているが、時には笑顔も見せるようになった。
冷静になり落ち着くにしたがって、自分が関わらない方がいいと考えを改めたらしい。