天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 外に目を向ける彼女から目が離せない。吸い付けられる磁石のようだ。

「莉子は、なににする?」

 ハッとしたようにメニューを手に取った彼女は「じゃあ」とにっこり微笑んだ。

「ラ・フランスのパフェとコーヒーで」

「わかった」

 俺のコーヒーとともに、ウェイターに注文する。

 水族館を出てコルヌイエに寄り、フロントで今夜は莉子と乃愛も泊まると報告し、ひと休みにラウンジに入った。

 乃愛ははしゃぎ過ぎたようでタクシーの中で寝てしまい、今は俺の腕の中でスヤスヤと寝ている。

「疲れただろう?」

「ううん。啓介さんこそ、寝てると重たいでしょ。安心しきった顔で寝てる」

 くすくすと莉子が笑う。

「重たさも含めてうれしいよ」

 無防備な寝顔もかわいくて仕方がない。親バカ全開だ。

「乃愛が起きたら着替えを買いに行こう」

「うん」

「莉子にもなにかプレゼントしたい」

 準備もしてあるが、莉子自身になにか選んでもらいたい。今日という日の記念に。

「ええ? 私は別に」

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