天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 山上を辞めたいという話ならどうしようかと思ったが、そうではなかった。

『島津先生にお願いがあるんです』

 なんでもどうぞと言うと。

『私子どもが欲しいんです。乃愛ちゃんみたいに島津先生の子が』

 彼女はさっぱりした性格をしている。

 とはいえあまりにストレートな申し出に絶句した。

『愛なんていらないですよ。先生は今でも変わらず莉子さんが好きでしょ。それでもいいんですっていうか、だからこそよくて』

『ん? 人工授精ってこと?』

『どっちでも』

 いや、聞いたからと言って請け負う気はないが。

『ダメですか?』

『すまない』と即答した。

 彼女はやっぱりだめかーと笑った。

『君はモテるだろ? なにも俺じゃなくたって』

『眉目秀麗で優秀な脳外科医なんてそうそういませんよ?』

 話を聞けば結婚願望がないという。恋愛はしないわけじゃないが、他人との生活は考えられない。でもときどき無性に子どもは欲しくなると。

『まだ若いんだ。考えが変わるかもしれないぞ』

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