天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 グレーのパーカーに着替えていて、整髪剤をつけていない前髪が額にかかり、ぐっと若く見える。

 テーブルにはブルーベリーがたっぷり入ったヨーグルトと、ローストビーフを挟んだバゲットがある。コンソメのカップスープと牛乳も。

「おいしそう」

 バゲットは紫色の玉ねぎやレタス、スプラウトも挟んである。黄色のマスタードソースがとろりとして完璧なビジュアルだ。

 啓介さんは時々こんなふうに休みの日の朝食を作ってくれる。ご飯なら焼き鮭と味噌汁なんてメニューもあったりする。

「いただきまーす」

 スープをひと口飲んで、早速バゲットにかぶりつく。

「んー、おいしい」

 こんな事もあろうかとローストビーフを買っておいてよかった。玉ねぎの微かな辛味やレタスのシャキシャキ感。グレイビーソースのローストビーフに粒マスタード。噛むほどに広がるお肉の旨味。

 あー、もう最高。

「莉子は本当に美味しそうに食べるな」

 啓介さんはくすくす笑うが実際おいしいのだから仕方がない。

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