天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
この半年をつらつら思い返していると、啓介さんが席を立った。
「とりあえず座ったらどうだ」
彼は応接用のソファーに移動する。
本当はこのまま帰りたいけれど、問題発言だけを残して出ていくわけにもいかず、私も応接用ソファーに向かう。
父の代から変わっていないソファーとテーブルを見て、懐かしいなと子供の頃を思い出した。
父が理事長だった頃は、よくこの理事長室に遊びに来た。
休日なのに忙しく働く父のために、お弁当を作ってきて家族で食べたりしたけれど、啓介さんが理事長になってからは一度しか入っていない。
部屋の雰囲気は随分変わった。
いくつかあったはずの観葉植物も、父が癒やしにしていた水槽もなくて、無機質で冷えびえとした空間になってしまった。
この部屋だけじゃない。病院の外壁も綺麗に塗り替えられていたし、外来受付も真新しくなっていた。