天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 彼はこの病院が欲しくて私と結婚したのだから、満足するだろう。思う存分彼の実家と再開発計画を進めたらいい。

「なるほど」

 視線をさまよわせ、ひとりごとのように彼はつぶやいた。

「軽井沢の別荘に行く時点で、妊娠を知っていたわけか……」

 遡って計算しているのかもしれない。

 その様子に緊張してしまい、うつむいてギュッと拳を握る。

「とりあえずわかった。だが、念のため子どもは鑑定してもらう。俺の子かもしれないからな」

 え、そ、それはまずい。

 喉をゴクリとさせながら平静を装った。なんとしても彼との親子鑑定は避けないと。

 どうしようと必死に考えていると「実は」と啓介さんが切り出した。

「まぁ、いつか言わなきゃいけないとは思っていたが――」

 あれ? もしかして自分から浮気を告白かしら。

「俺には子どもができにくい体質でね。それで子どもは欲しくないような発言をしたんだが、本当に嫌いなわけじゃない」

 え? 嫌いじゃない?

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