天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「な、なに言ってるんですか?」

「その子の親権を要求する。それから、この病院は俺はいらない。放棄する」

「放棄?」

「俺は出て行く。後は自分で、なんとかするんだな。離婚については弁護士に任せる」

 啓介さんは腰を浮かせようとする。

「ちょ、ちょっと! あなたなにを言ってるの? この病院ほしくないの?」

「面倒な経営なんぞ俺は嫌だね。結婚したから仕方なく経営の勉強までしたが」

「だったら、人に任せればいいじゃない。理事長のまま」

 彼は怪訝そうに眉をひそめる。

「なにか勘違いしてないか? 俺はこの病院に一切の未練はないぞ」

 えっ……。嘘でしょ?

「だって、ここの再開発とか」

「再開発? ああ、あれか。でもこの病院は直接関係ないじゃないか。まあ近くに総合病院があるという謳い文句にはなるらしいが、そもそも再開発課の区域には入っていない」

 そんな……。でも、鈴本小鶴が……。

「まあ、うちの実家で病院の建築なんかもやるから、俺に手伝えって言っているし」

< 68 / 286 >

この作品をシェア

pagetop