天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「お父様はずっと悩んでいらっしゃった。それは本当です」

 院長は、キャビネットからファイルを取り出して私に差し向ける。

 そして「ここを見てください」と指差した。

「彼らの給料とボーナスです。この十年をグラフ化しました。他の職員に比べて異常でしょう?」

 グラフには、医師と看護師の平均と彼ら幹部の給料が示されている。内科と外科のふたりの部長と看護師長の給料だけが、他の人の何倍も高く跳ね上がっていた。

「椅子に座ったままのさばり、執刀しても最初の五分だけ。部下を脅し仕事はしない。でも取り巻きを従えていたから、証言する者がいない。ほかの職員の給料が上がっていない理由は、皆さん彼らの横暴な振る舞いに耐えかねて辞めてしまうからです」

「まさかそんな。父はなにも言わないし、皆さん私や母には優しかったから……。てっきり」

「巧妙なんですよ」

 院長はフッと表情を歪める。

「お父様は若くして理事長になられ彼らに頼らざるを得なかった。お父様が悪いわけじゃない」

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