天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 それじゃ、啓介さんが言いたかったのは……。

「お父様は啓介さんにすべてを託したんです。医師として優秀な啓介さんなら彼らを一掃できるからと」

「――そうだったんですか。私、なにも、知らなくて」

「お父様も啓介さんも、お嬢様には嫌な思いをさせたくなかったからですよ」

 そんな……。

 私はなにも知らないまま、守ってもらっていたのにそれも知らす。

 ただ、啓介さんを疑って。

 でも鈴本小鈴が、と喉もとまで出掛かった言い訳を飲み込んだ。

 たとえ本当でも嘘でも、もう遅い。

「院長、私、啓介さんと離婚しようと思うんです」

「え?」

「啓介さんにこの病院を渡そうと思うんですが」

 でも、彼は。

「いらないと言われましたか?」

 ハッとして顔を上げると、院長は悲しげな瞳で微笑んでいる。

「そう思うんですか?」

 院長はうなずいた。

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