天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
「彼は医師です。経営者になりたいわけじゃないでしょうからね。いつだったか言っていましたよ、結婚していなければアメリカに渡り、向こうでもっと多くの臨床数を経験したかったってね」

「アメリカ……」

 啓介さんにはそんな夢が。さっき彼が言った話は本当だったんだ。

『アメリカにも行きたいしな。結婚しなければ行くつもりでいたから』

 でも、それならどうして私と結婚したの。

 夢をあきらめてまで、なぜ?

「まあここまで啓介さんが整えてくださいましたから――」

 院長はその先を言わず目をつむって腕を組んだ。

 今後、彼がいなくても大丈夫かどうか考えているのか。

 申し訳ない思いでいっぱいだ。

 なにも知らないくせに先走った私のせいで、病院は優秀な経営者を失おうとしている。

 目を開けた院長は「失礼ですが離婚の理由は?」と聞いてきた。

「私が――」

 そこまで言って涙がこみ上げた。

「院長、ごめんなさい」

「どうして私に謝るんですか。お嬢様?」

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