天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 この前の理事長室でも、冷ややかではあったけれど、声を荒げたリはしなかった。

「そうだといいけどね」

 流樹は綺麗な顔を少し歪め、苦笑を浮かべる。

 優しい流樹にこれ以上迷惑はかけられない。なんとしても今日ですべてを終わらせないと。

 約束は午後二時。あと二十分。

 流樹はコーヒーをおかわりする。

 私はジンジャーエールを頼んだけれど、緊張で喉を通らない。

 啓介さんには私だけを憎んで欲しい。

 流樹も、そして本当は啓介さんの子である乃愛が憎まれたら、私はふたりにどう償ったらいいかわからないもの。

 あと十五分。

「莉子、さっきから時計ばっかり見てる」

 流樹に言われてハッとした。

 あははと、笑ってごまかす。

「ごめん、やっぱり緊張してきちゃって」

「まぁ、そうだよね。瑠々が頼んだ調査会社でたらめだったんだもんな」

「あれはまあ、仕方ないよ。瑠々は悪くないもの」

 昨夜、夕食を終えて乃愛を寝かしつけ、ぼんやりと寝顔を見ていると、瑠々から電話があった。

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