天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 鈴本小鈴の告白をすべて信じてしまったのが間違いだったのだ。再開発について、啓介さんに言われて初めてインターネットで調べたけれど、相変わらずの山上総合病院は隣接するだけで、指定の地区には入っていない。

 彼女の言った話は嘘が混じっている。もしかしたらすべてが嘘だったかもしれないと、今は思っている。

『俺がここを欲しければ、とっくに俺の名義に変えただろう。そうすれば口座もなにもかも俺は自由にできる。なのにそれをせず、借金だけは全て俺が保証人になった。そうする理由を考えみろ。喜んでこの席にいると思っていたのか?』

 啓介さんの発言を考えれば考えるほど、自分の愚かさばかり思い知らされた。

 私は大切な人に恩を徒で返した。最低な形で……。

 取り返しがつかない。

「流樹。私ね、啓介さんに徹底的に嫌われたいの」

「どうしてさ、莉子はなにも悪くないじゃん」

 ううん。私が悪いの。

「早く終わらせたいんだ」

 憎んで恨んで復讐まで考えた私に残された道は、彼に憎んでもらうしかない。それがせめてもの償いだから……。

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