天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 私や山上総合病院なんてさっさと忘れてアメリカに行ってほしい。

「そっか」

 流樹は心配そうに私を見る。

 女の子みたいに綺麗な顔の流樹。今やお店でナンバーワンだというのに、こんな役引き受けたくないだろうに。

「うん。流樹ありがとうね」

「なにを今更」

 あははと笑い合って、気持ちが落ち着いた。

 自分で立てた計画なんだからしっかりしないとね。

 さっさと嫌われて決着つけて、彼を解放してあげないと。

「乃愛、寝ちゃった」

「流樹、抱きかた上手。気持ちよさそうに寝てる」

 乃愛は流樹の腕の中でスヤスヤ眠っている。まだなにもわからないとはいえ、これから始まる修羅場を見せたくはないからちょうどよかった。

 そうこうするうち長い待ち時間は過ぎ、約束の五分前に啓介さんが現れた。

 途中コーヒーを頼んで歩いてくる。

 病院から来たのだろう。彼はスーツ姿だ。コートを腕に掛けている。

 席に着いてすぐ、彼が最初に視線を送ったのは流樹の腕の中で寝ている乃愛だった。

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