天才脳外科医はママになった政略妻に2度目の愛を誓う
 でも時間にすればほんの数秒で、その後、流樹をまっすぐに見る。

「君が赤ん坊の父親か」

「はい。すみません」

 ホストゆえに派手な風貌である流樹の髪は金髪だ。

 耳には大きなサファイアのピアスをしている。ゆったりとした黒いセーターにデニムのパンツと、服装は普通だがどう見ても水商売だとわかるだろう。

 啓介さんはどう思うのか。

 忙しい夫に相手にしてもらえず寂しさを埋めるためにホストクラブにでも通ったと思うのかな。

 コーヒーが届き、ひと口飲んだ啓介さんは私を見た。

「莉子、君には改めて、俺は理事長を辞任すると伝えておく。すぐにでも手続きをしたい。引き継ぎを」

「はい」

 それ以外返す言葉がなく、私は唇を結んでうつむいた。

「そらから君。君は社会的に抹殺する。俺からはそれだけだ」

 えっ!

「あ、あの」

 それは困る。

 もう用事は済んだとばかりに啓介さんは、席を立つ。

「待って、流樹のせいじゃないの私が」

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