オオカミと父親 ひねくれた純愛（おまけの小話・その３）

銀の月

３時間、過ぎた。
俺は黒のスーツで、玄関ホールでスタンバイしているのに・・

女の支度は長い・・
長すぎる・・・

俺が、２本目のたばこを吸い終わった時だった。

「アレク、お待ちどう様」
エドナが声をかけた。

金のドレスで、ラインストーンがいくつも流れて、
薄い布が、歩くたびにたなびく。

元女優だけあって、見せ方が美しい。
パーティの華として、
誰も文句は言わないだろう。

教授は・・アイリスは・・
どうなったのか・・

「アイリスちゃん、こっちに来て」

エドナが、視線をやった方を見た。
教授は、扉に半ばもたれかかるように、立っていた。

黒い髪に、
メッシュで赤と紫の筋が流れる。
濃い紫のボディラインに沿った、
スリットが腿まで入るドレス。

銀の光沢のあるピンヒールが、
脚の美しさを、強調している。

片側の足首には、
金の鎖がまかれて揺れるのに、
目がいく。
胸元も強調するように、
大胆に開いて、その谷間に影が
落ちる。

化粧もエドナが、プロ仕様にしたからだろう、
ほとんど別人のように、妖艶だ。

「彼女、目鼻立ちが整っているから、化粧映えするタイプね」

エドナは自分の作品を、鑑賞するように言った。

美しいエドナと並んでも、
アイリスは独特の美しさを放つ。

銀の月・・

エドナが太陽なら、
アイリスは、月のように
冷たい光を放つ。