オオカミと父親 ひねくれた純愛(おまけの小話・その3)
恋人と歩くというより、
誘導するといった感じだ。

坂を上ると、
小高い場所に、6角形の東屋
(あずまや)がある。

その周囲を、
つるの草花がからまり、薄紫の花が咲き乱れている。

湖の水面が、太陽の乱反射で
キラキラ輝いて、
風が東屋(あずまや)を吹きぬける。

俺は東屋(あずまや)に入り、
ベンチに座った。

「隣にどうぞ」
俺は教授に声をかけた。

「するのか・・・」
教授は、死刑が執行される前の
囚人のように、深刻な顔をした。

「その、緊張しているので・・
ストレッチをする」

「はぁ・・・?」
俺は口を押えた。

キスする前に、準備体操する
女がどこにいるか?

教授はバックをベンチに置いて、
肩を上げ下げしている。
腕をグルグル回した。

「ああ、まったく・・もうっ」
俺は笑いと呆れながらも、
教授の手首を、握って引っ張った。
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