オオカミと父親 ひねくれた純愛(おまけの小話・その3)
「汚れてしまう。
だめだ、君が会場に戻れなくなる・・」

教授は、泥のついた顔を上げて、
俺を見上げたが、
それからまた、顔を落として、
小さい声で言った。

「ここで親父さんの顔を、つぶしてはいけない」

「つぶれるような、
柔な親父じゃないですよ。」

俺は言い返してから、屈みこんで、教授の足首に手を触れた。

「靴、脱がしますよ」
脱がした靴から、
丸めたテッシュがポトンと落ちた。

エドナの靴が、合わなかったのだ。
それに片方のヒールが、折れている。

「足首、動かしますよ」
俺は足の甲に手を添わせて、少し力を入れた。

「ウギッ・・」
教授が痛むのか、どこからか、
カエルのような声が漏れた。

足首をひねったか・・・
「これから、腫れてきますね。
早く冷やさないとだめです」

腫れ具合によっては、
整形外科にも、連れて行かなくてはならない。
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