妖の街で出会ったのは狐の少年でした

26話 転入生

それからしばらく大きな問題もなく日常を過ごしあっという間に2月になっていた。教室に行くと何やら騒がしい。
「あのね、今日転入生が来るんだ。」
スイウがそう言った。
どうやら、先程廊下で初めて見る子とすれ違ったらしい。おかっぱのような髪型で、私のような服装をしているらしい。
おかっぱ・・・私と同じような服・・・
悶々と考えていると鐘が鳴り、先生が入ってきた。
「おはようございます、皆さん。
いきなりですが転入生を紹介します。
鬼と人の両方の血を引いた生徒、
ナツキさんです。」
ヨナガ先生の説明の後に入ってきた
ナツキという女の子。
それは間違いなく昨日、旅館に泊まって行った子だった。
「ご紹介に与りましたナツキです。
父の仕事の都合により2週間ほど皆さんと過ごすことになりました。短い間ですがよろしくお願いします。」
おかっぱというかボブヘアーのような感じで、ブラウスにセーター、グレーの
チェックスカートという、制服らしい服装だった。
(私の制服、スカート無地だから羨ましい。)
父?昨日は母親しかいないように見受けられた。単身赴任とか事情があるのか?
彼女は右手首を左手で掴んでいた。
ロクと似たようなタイプのような子だった。私と目が合い、一瞬眉間に皺が寄った気がした。
(睨まれた?)
ナツキは、私の後ろの席に座る。
突き刺すような視線を感じる。なんで。
私何かしちゃった?でも初対面だし・・

ナツキがずっとカズハのことを睨んでいる。そして心なしかカズハが萎縮しているように見える。
「なぁ、ロク?」
「なんですか?」
「あれ、どう思う?」
オレが視線を流すとロクは一度その方向を見てまた前に戻る。
「女性の心境は複雑ですからね。
下手に男が突っ込まない方がいいと思いますよ」
「冷めてるなぁ」
カズハはさっきから手が動いていない。気になりつつも授業に集中する。

休憩の時間となり、カズハはスイウや他のチビ達と絵を描いている。
それをナツキは輪の中に入ることなく、傍からじっと見ている。
心なしがカズハの顔が引き攣っている。
ぼーっと見ているとナツキと目が合い、
オレはすぐに反く。

授業が再開したので別の教材をやる。
悶々と考える。カズハか気に入らなくて物を捨てたり壊したりして、あまつさえ
いじめられたという嘘の報告をして
精神崩壊や学級崩壊に追い込んで
最後は・・・冷や汗が流れる。
「んなこと、ぜってーダメだ!」
気づいたら叫び、立ち上がっていた。
教室の視線がオレに向く。
「どうしましたか?ジュンさん」
「あ、いえ、なんでもありません。
すみませんでした。」

「何考えてるんです?」
授業後、ロクにオレは考えてきたことを話す。すると呆気に取られた顔で
そう答えてきた。
「だって、ずっと眉間に皺が寄ってるんだぜ。おかしいだろ?」
「何か、別件で悩んでいたのでは?」
「別件て。ロクは淡々と言うけど、もしオレの言ったことが本当だったらどうするんだ?カズハのことを疑うのか?」
「まさか、俺は誰よりもカズハ様を近くで見ています。使いが主を信じなくてどうするんです。
それにジュンもそういうことをするような方じゃないと分かりきっているじゃないですか」
(ロク、さらっとマウンティングしたな)
「まぁ、それもそうだな。要らぬ心配かもしれねぇし」
「俺はこれから仕事があるので失礼します。」
「おう。また明日な。」

「ねぇ、ちょっといいかな?」
振り向くとナツキが立っていた。





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