妖の街で出会ったのは狐の少年でした

30話 はじめての・・・

昨日、ジュンと帰り道で話し合いをした
「失礼な事言うけどナツキってなんで表情がいつも怖いんだ。なんか睨んでる感じがするんだけど」
「え、睨んでるつもりはないんだけど
なんて声をかけようか考えると緊張しちゃって。」
答える声がだんだん小さくなる
「緊張?」
「だって、こんな穏やかそうな学校に来たのは初めてで。友達になりたいとって思ったのも初めてだからどうすればいいのかわからなくて」
(不器用なんだなぁ)
「じゃあまずは・・・」

次の日
「お、おはよう」
ー回想ー
「とりあえずまずは挨拶してみたらどうだ?小さい声でもいいから。とりあえず眉間に皺が寄ることはやめよう。
そしたら多分チビ達がくいつくと思うから間接的にカズハの好感度も上がるんじゃないか?」
ー終了ー
「おはよう、ナツキ、おねーちゃん」
座敷わらしの女の子が答えてくれたが、
カズハの後ろに隠れてしまった。
「おはよう、ナツキ、さん」
カズハも返してくれたが、遠慮がちで
しかもさん付けだと流石にへこむ。 
今日の授業には体育があってドッチボールというものをやることになりカズハと同じチームに入る。
ー回想ー
「明日、体育の授業があるだろ?
その時にカズハと同じチームに入れば
距離が少し縮まるじゃないか?」
ー終了ー
同じチームに入ったはいいが、
なんか避けられてる気がする。
ロクの投げたボールを取り、カズハに渡す。
「カズハ、投げてみて」
「え、うん」
カズハの投げたボールはジュンの
顔に当たる。と思ったがジュンは首を伸ばし、顔に当たることはなかったが首に
直撃。
「ご、ごめん。ジュン!」
「いや、大丈夫だ。カズハ」
そういい、ボールの形がくっきりと残った首を少しずつゆっくり戻していく。

さっきの体育が最後の授業だったから
放課後、昨日と同じように校舎裏にいる「ジュン首、大丈夫?」
「大丈夫。
ちゃんと戻ったから
それよりどうだった?体育の時間」
それより?
「ん?どうした。ナツキなんか怖い顔になってるけど」
「別に。ごめん、ちょっと気分悪いから帰る」 
「待てよ」
帰ろうとすると手を掴まれたので振り払う。
「っ、いきなり掴んで悪りぃ。
でも言ってくれねえとナツキが何を考えているのかわかんねぇんだよ。」
ジュンが大丈夫と言ったときの目。
あの目を私はよく知っている。
「母さんと同じ目だから」
「母さん?ナツキの?」
「私はあの目が嫌い。」
(自分を責めるような、私に詫びるようなあの目は嫌い。そんな目で私を見ないで)
母さんはあの目の時、必ず

ナツキはスカートの裾を握り、苦痛の
表情をしていた。
「ごめんな、心配させて」

ほら、同じだ。謝ってほしいんじゃない
私はただ
「でも、ありがとうな。心配してくれて」
"ありがとう"
ごめんじゃなく、欲しい言葉をジュンは
くれた。
なんて言えばいいのかわからない気持ちが胸を満たす。
私の目から溢れる雫が地面に落ちて消える。
ジュンが驚き、慌てる姿を見て笑ってしまった。








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