妖の街で出会ったのは狐の少年でした
36話 ダンス
「ロ、ク・・・」
両手を広げ立っていた。
こめかみから血を垂らして。
思考が正常になった私は慌てて、
こめかみをハンカチで押さえる。
「ロク!大丈夫、じゃないよね。
ごめん。」
ハンカチに血がじわじわと滲んでいく
浅いと思っていたが思ったより深かったらしい。
暴れようとする山姫を雨女が抑えている
ジュンとナツキが下の子達を宥めようとするが猫又の子が泣き出してしまい、それが伝染して手に負えなくなっていた。
目の前で、おにいちゃん的な存在が血を流していたら泣くに決まっている。
もう学級崩壊していた。
騒ぎを聞いたツキナ校長先生と
ヨナガ先生が教室に入ってくる。
「私の生徒に何をしている」
校長先生がすごい剣幕で、
でも静かし呟いた。
ヨナガ先生はすぐに山姫を拘束して教室から連れて出ていった。
校長先生がすぐにロクを連れて教室を出ていったがすぐにガーゼを当てて戻ってきた。
その後はジュンとナツキのおかげで
なんとか収まりつつあるが鼻をすする音が聞こえる。
とても授業どころではなく、その日は
すぐに下校になった。
「あの、ガーゼをつけた男の子。
ちょっといいかな?」
雨女の講師に呼ばれ、
ロクはついていった。
俺は雨女の講師について行き、話をした
「本当にごめんなさい。同僚が、今までもきつい物言いはあったけど、手を出すことは決してなかったの。だから今回のことは私も驚いているわ。」
「そう、なんですか。」
「彼女に代わってお詫びします。
本当に申し訳ありませんでした。
あの子たちにもこの次謝らないと」
「今じゃないんですか?」
「今、行ったらまた、混乱するだろう
と思うから。それにろくろ首の男の子
ずっと、あなたのこと気にしてたのよ」
「気づきませんでした」
「あの、ひとつ聞いてもいい?」
「どうぞ」
「どうして、あの子を庇ったの?
あなたが怪我をすることも
なかったのに」
「怪我した本人を前に
不謹慎な質問をするんですね。
女性に怪我させるなんて言語道断です。
ですが、それ以前にあの方は俺の主です。主の守るのは使いとして、従者と
してあたり前でしょう?」
「主、か。素敵な関係ね。」
俺はため息混じりに答える。
「そんなことはないですよ。
正直言って面倒くさい関係です。
従者だからといってズカズカと主の私生活に踏み込んでいいわけではありません。
境界を気にしながら接しなければいけないので」
「そうなんだ。ごめんなさい。
立ち話をさせて」
「俺は仕事があるので
そろそろ失礼します」
オレは会釈をし学校を出る。後から来たカズハ様と合流し、宿に戻り仕事をする
次の日、雨女の講師から謝罪があった
もう1人の講師は辞めたと聞いた。
いきなりだが今までの授業は
真っ白にして、ペアも解消し
ひとりで踊るのもよし。複数人で
まとまって踊るのもよし。とりあえず踊ってみようと言われた。
校庭に出て、洋楽を流し下の子たちは最初は戸惑っていたものの楽しくステップを踏み始めた。
俺とジュンは顔を見合わせ、
「ナツキ」
「カズハ様」
俺たちは胸に手を当て片手を差し出し
「俺/オレと踊っていだだけますか?」
一瞬目を丸くしたが、
「「喜んで」」
お互い手を取り、踊り出す。
ステップも完璧ではない、
テンポも上手くできない。
でも凄く楽しい時間だった。