妖の街で出会ったのは狐の少年でした

59話 そして

廊下で飴を取り出して見る。
飴は周りは透明で中は赤や黄色など色々な種類があった。一粒取り出して舐めていると、中は果汁だと分かった。
「美味しい」
完全に飴が溶けてから部屋に戻る。
なんか感慨無量だな。
「ロク」
「もらいましたか?皆さんから」
「うん、もらったよ贈り物も。気持ちも」
「そうですか。では最後は俺から、の前に」
ロクが指を鳴らすと
「これって」
私の制服が桜柄の袴に変わった。
「すごいね。可愛い」
着物は袖が少し小さくなっていて、
袴は紫色。袴にも小さな桜が描かれている。
「お気に召す様になりましたか?」
ニコニコしながら聞いてきた
「ヨナガ先生の知り合いが着物を袴に作り替える仕事をしているので、話したら快く引き受けてくれたんです。」
「そうなんだ」
後でヨナガ先生にお礼伝えてくれるよう言っとこう
「カズハ様」
「ん?」
「カズハ様がこの街に来て、俺があなたの使いになって今日でちょうど一年です。今日が特別な日なら今日を誕生日にしませんか?」
「特別な日を誕生日。・・・ん?、あのさ、ロク。私、自分の誕生日がわからないってジュンにしか言ってないんだけど。なんで、それをあなたが知ってるの?」
「あ」
目が泳いでいる
「正直に答えて」
「じ、実はジュンと情報共有をしてまして」
「じゃあこれはロクとジュンの計画?」
「・・・はい」
なるほど
「ありがとう、今まででいちばんの誕生日だよ」
「カズハ様」
ロクは顔を綻ばせた。でもすぐに咳払いをして、真剣になった。
「脱線しましたが、気を取り直して。」

考えていたのに、いざ伝えようとすると緊張してきた。思っていたことを素直に。
「カズハ様。正直に言って俺はあなたの使いになることを言われた時は、戸惑いました。妖と人間
どちらでもない俺を主はどう思うか、と。
でもカズハ様は俺の過去を知っても変わらず俺と接してくれました。あなたが俺の日常を変えてくれたんです。ありがとう、カズハ様。」
そう言い俺は白い封筒を渡す
「開けてもいい?」
「いいですよ、むしろ開けてください」

「これ、」
薔薇の切り絵がされているしおりだ。 
上部に赤いリボンが結んであった
(でも、なんでしおり・・・あ、
前、本を読んでたから)
本を閉じる時、カバーを間に挟んで閉じていた。
それをロクは見逃さなかったんだ。
透明なフィルムが貼られているので丈夫だ。
「ありがとう、ロク」
ふとロクの手に目が行く。
ロクの手には数カ所浅い傷がついていた。
「もしかして手作り・・・」
「本当は買いに行きたかったんですが時間が、
気に入らなかったら使わなくても、」
「気に入らないわけないよ。ありがとう、
大切に使うよ」
被せて言ってしまった。ちょっと申し訳ないな
「カズハ様、薔薇は色によって花言葉があるのはご存知ですか?」
「花言葉?」


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