妖の街で出会ったのは狐の少年でした

68話 無力

「カズハ様は先に部屋に戻っていてくれませんか。俺はナツキと話したいことがあるんです。」
突然にロクはそう声を発した
「うん、わかった。それじゃあナツキ、
また明日」
カズハは了承し私に声をかけると
行ってしまった。
「さて、あらかた検討はついていますが、
聞かせてください。何があったんですか」
ロクの観察眼はすごいな
私はあったことを話す。
売られそうになったことを
「大変でしたね。」
「まぁね、でも先生が助けてくれたから。
今思えば、冷静になって相手に反論したこと後悔してる。逆鱗に触れてたかもしれないって」
「大丈夫なんですか?帰る時一人で」
「それは大丈夫。先生が色々やってくれたから。」
「そう、ですか。すみません手間を取らせて」
「大丈夫、気にしないでそれじゃあ部屋戻るから」
そう言って私はロクと別れた、
部屋に置いてある夕食をいただいたが、
あまり味を感じられなかった。

次の日
私は宿に三日分の宿泊費を出して外に出た、
学校に行ってから帰ってもそう遅くはならないと思う。
「おはよう、ナツキ」
「おはよう、ジュン」
「なんか首のとこ痕になってないか。」
「え、あー、ちょっといざこざがあって
でも、もう大丈夫」
私は首に手を当て笑って答えた

休憩時間にオレは廊下にいる、ロクに
話しかける
「なぁ、ロク」
「なんですか?」
「ナツキ、なにがあった?」
「何がとは?」
「ナツキの首にうっすらと何かの
痕があったから聞いてみたら
いざこざがあった、でももう大丈夫って」
「そうですか。残念ですが俺の口からは言えません。」
この反応、ロクは知ってるんだ。
「そっか」
無理に問いただそうなんて思わない。
解決したなら、もう終わった話だ、
でもロクは知ってる。多分カズハも。
俺だけ何も知らないで終わるのか。

授業が終わり帰ろうとするとナツキに呼び止められた
「ジュン、ちょっといいかな」
「いいけど、どうかした」
ナツキに手招きされついて行ったら校舎裏
「実は、首の痕のことなんだけど」
そう言って話し出したのは
売られそうになったことだった。
「売ら、え?」
「まぁ、命拾いしたけど」
「カズハとロクも知ってるんだな」
「カズハは知らないよ。でもロクは鋭くてね、すぐに気づいたよ」
「ごめん。」
「え」
「何もできなかった。」
「気にしないで。知らなかったんだし。
もう終わったんだから」
「ナツキ」
「犯人にはね」
ナツキはポツリと呟いた。
「冷静に反論した。
でも言葉選びを失敗したら死んでしまうん
じゃないかって怖かった。でも、もう平気
ここでジュンと話が出来てよかったよ。
ありがとう」
「え、うん」
オレは戸惑いながら返事した。
「じゃあ、そろそろ帰らなきゃ。
夜になっちゃう」
歩き出したナツキの腕を掴んで引き留める
「ん、なに?」
「あ、ごめん。体が勝手に」
「なにそれ」
小さく笑った。
「親友だから。」
「え?」

真っ暗になる前に帰ることができてよかった。
ジュンが言ったことが、表情が、頭から離れない
「オレはナツキの親友だから、
オレはずっとナツキの味方だから」
いつもと違う真剣な眼差しに一瞬
ときめいてしまった
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