妖の街で出会ったのは狐の少年でした

80話 お菓子


オレの中に緊張の不安の影が大きくなるが、それを他所にもう2月。
教室で本を読んでいたオレの耳に入ったのは
「パーティー?」
視線はそのままにスイウとチヨが話している方に耳を傾ける。
ちなみに年間行事になっているお泊まり会は校長先生の
発案だとヨナガ先生に聞いたことがある。
(きっとこのパーティーも校長先生が言い出したろうな。
ヨナガ先生も大変だな)
「なんか、校長先生の提案みたい。ヨナガ先生、頭抱えてた」
秒で旗おられた。
始業の鐘が鳴り、チヨたちは席に着いた。
ヨナガ先生が疲れたような顔をして入ってくる。
(十中八九、理由はあれだろうな)
先生は、ポツリポツリと話し出した。
まぁ、ざっくりと
・校長先生の提案でお菓子を各自用意して学校で食べる
・量や値段は各自、自由
・ゴミは学校では回収しない
ということらしい
予想通り、放課後はパーティーのことでもちきりだった。
交換しよう、食べ比べしようかとの声が聞こえる。
「初めてだよね、パーティー」
初めて・・・。
そうだ。スイウたちにとって初めてでもオレたちにとっては最後。
学費を貯めたいといけない、他にも出費はある。
これからは、我慢する。娯楽はしない。
食費も切り詰める。でも、これだけは。
オレは学校を飛び出し、あの場所へ。
電車を乗り継ぎ着いた場所は都心。
カズハのプレゼントを選んでいるに見かけたお店。
可愛い感じのお店でほぼ女性客ばかり。
(大丈夫、これは彼女のプレゼント買いじゃない、あくまでパーティーの買い物)
自分に言い聞かせ意を決して中に入る。
ぐるりとあたりを見回すと、クッキー、マシュマロ、ゼリービーンズなど小分けのカゴが置いてある。レジの横にあるショーケースには初めて聞くものばかり、
タルトレット?オランジェット?アマンド・ショコラ?
頭が痛くなってくる。
常温保存ができるものに限られるので、一旦ショーケースから離れる。
カゴに置いてあるお菓子に予算を考えながら手を伸ばす。
なんとか買うことができた。
お金を払うときに店員から
「贈り物ですか?」
と聞かれ、戸惑いつつも
「あ、はい。贈り物です」
そう答えると店員はニコニコした顔で
「それでは、包装紙をご用意しますね。
ご自分でなさいますか?
それとも当店がいたしましょうか?」
「お願いしま、あ、すみません。やっぱり自分でやりたいのでそのままでお願いします」

オレは包んで貰おうと思ったが自分でやった方がアレンジとか出来ると思い
取り消してもらった。直後だったが店員は嫌な顔ひとつせず承諾してくれた。
お店を出て、向かっている途中に寂れ駄菓子屋を見つけた。
中に入ると、おじいさんが椅子に座っていた。
「こんにちは」
おじさんは少し反応が遅れたが
「こんにちは」
と返してくれた。
中を見渡せば、見慣れたお菓子が陳列されている。
壁にはカードガム、お面、シャボン玉などがぶら下がっている。
「久しぶりのお客様だ」
おじさんはぽつりと呟いた
「久しぶり?」
「昔はこの駄菓子屋には毎日子供たちが遊びに来たんだ。
店先で買ったばかりのシャボン玉を拭いたり、メンコをしたり、
冬は焼きそばを作りみんなに振舞ったり楽しかったな。
最近は近くにお菓子屋さんが出来てしまって客足が遠のいているんだ。
古いものより新しいものを求める性には逆
らえないな」
ふと飲み物が陳列されている棚を見ると、
少しホコリ被っていた
「体が痛くて、掃除が行き届かなくてね。
不衛生に見えるのも要因なのかな」
「跡を継ぐ人は居ないんですか?」
「あいにくね」
「そうなんですか」
オレが出来ることはないと思い、これ以上話さなかった。
お会計をして、おじさんに会釈をして店を出た。夏休みに帰ってこれたらまた来ようと思い電車に乗る。
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