妖の街で出会ったのは狐の少年でした

85話 心残り

卒業の日がどんどん近づく
オレはカズハと廊下で立ち話をする
「ジュンっていつこの街を出る予定?」
「卒業の日がして3日後かな」
「3日・・・」
「なぁ、カズハって・・・いや、なんでもない。」
「どうしたの、急に」
カズハは軽く笑い教員室へ歩いて行く。
ロクのこと好きなのか、と聞こうとしたがやめた。
オレはお互いがお互い好きなのはみてわかる。
伊達に友達をやってたわけじゃないから。
でも、事実確認してどうするんだ。
それを聞いてオレが何かできるわけじゃない。
自分のこともできないのに他のことができるわけない。
「自分のこと、か」
(自分の気持ちにはとっくに気づいてる。でもそれを言って駄目だったら。
この関係が壊れることの方がオレは嫌だ。それに、駄目だったとして
今まで通り、接することができるほどオレは器用じゃない)
オレはカズハの歩いて行った廊下を見る
(これからは小さな亀裂が大きな溝になることもあるのかもな)

その日の夜、私が部屋でくつろいでいるとミズキさんが部屋に来た。
「ミズキさん、どうしたんですか?」
「ちょっといいか?」
「私は、いいですけど」
部屋にいたロクは察したのか、ミズキさんに会釈をして出て行った。
とりあえず部屋にとおし、冷蔵庫にあるお茶を出す。
「ありがとう」
お茶を少し飲み私に聞く
「単刀直入に聞くけど、カズハって卒業式は袴なのか?」
「えっと、ごめんなさい。そういうのはまだ」
「まぁ、女の子1人だしな」
「はい。」
「あまり焦るなと言いたいけど、そろそろ時間ないしな」
「そう、なんですやね。」
「ちなみにアタシの時はみんな袴だった。」
「袴、ですか。明日2人と相談してみます」
「そっか。急にごめん、カズハ。おやすみ」
「おやすみなさい、ミズキさん」

翌日
「服装、ねぇ」
「先輩たちはほとんど袴でしたね」
「じゃあ私たちも?ジュン?」
ジュンはなにか考えていた。
「別に袴にこだわらなくていいんじゃないか?」
ジュンが予想外のことを言い出した
「え?」
「卒業式は必ず袴じゃないといけないとかはないだろ?」
「そうですけど・・・」
私だけじゃなくロクも困惑している
「卒業式ってこの学校でチビたち、先生達といられる最後の日だからこそ今までと変わらない、いつも通りのオレで卒業したい。」
「いつも通り、ですか。」
いつも通り、私は
「いいんじゃないかな」
「カズハ様」
「この世界の卒業式ってどういうのが当たり前なのかはわからない。
ても卒業式って卒業生、わたしたちが主役でしょ?少しわがまま言ってもいいんじゃないかなって」
「先生には怒られそうですけどね」
「というと」
「俺も賛成ですよ、やりましょうよ。俺たちなりの卒業式を」
「カズハ、ロク。ありがとう」

(ナツキと卒業式やりたかったな)
オレはナツキの机を見る。
「4人で卒業したかったね」
「これから交流が減ってしまうんで
しょうか」
カズハとロクはそれが心残りらしい、
もちろん、オレも。
「ジュンってナツキと文通、してるの?」
「え、うん。ナツキに合格したことを伝えて。返事には、合格おめでとうって書いてあって、近況報告が書いてあって、
最後に・・・」
「最後に?」
「いや、なんでもない」

直接言うことは出来ないから少し早いけど
卒業、おめでとう
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