妖の街で出会ったのは狐の少年でした

93話 ぶつかる

「目障りだ、出て行け」
「嫌です、あなたと向き合えていません」
「戯れ言を」
「それは、ナグモさんにも言えることでは?」
「なぜ」
眼光が一段と鋭く感じる。逆鱗に触れるかもしれない
「ナグモさんは私たちに本音で話しました。
でも私はなにも話していない。自分だけ話して私に話させずに出て行け、というのは戯れ言ではないんですか」
「うるさい」
今度は本当に飛ばされそう。
「ナグモさん、私は怒っているんです。自分勝手の度が過ぎてます。
確かに、ルイさんはあなたを縛ることをしたと思います。でも、それを了承して実行したのは誰でもない
あなた自身ですよ。それを私にぶちまけられても困ります。ルイさんの子孫であって私は彼女自身
ではないんです。」
言葉に詰まるナグモ様に近づき、彼女の前に正座する。
「私はルイさんではないのでナグモさんの欲しい言葉を的確にいうことはできません。、ですから私なりの言葉を聞いてください。」
静かに言うとナグモさんは小さく頷いた
「ナグモさんはルイさんに嫉妬していたんですよね、
なら、どうして私を導くことをしてくれたんですか。
あの時点でルイさんは既にに亡くなっていました。
約束を破っても責める相手はいません。」
ナグモさんはなにも言わない。むしろ眉間に皺が寄っているように見える。
まぁ尋問まがいなことをしてるから当然か。
「ルイさんを表裏のない性格だとおっしゃいました。ですがそんな性格でも誰彼構わず
相談するとは思えないんです。むしろその性格の人ほど溜め込みやすいと私は考えています。
それに結婚の後押しなど余程のことがない限り、他人には相談しないものです。
親、兄弟、友達、ひっくるめて信頼している人にしかそんな相談はしません。
あなたは心から信頼してくれた人に対して、ずっとそのような感情で接していたんですか」

カズハ様は淡々と静かに話している。静かに話しているがどこか怖く感じる。
穏やかな人ほど怒る時は怖いって本当なんだな。ちらりとミズキ様を見ると呆れているらしい。

ナグモさんは狼狽えている。
「と、偉い口を叩いていますが感情を一番理解しているのは自分自身。他の誰にも操れるものではありません。」
こわばっていた表情と打って変わってカズハ様は柔らかな笑みを浮かべる。
「ここからは私の気持ちで話をさせてもらいます。」
眉間に皺がなくなり真剣な目になったのを私は見逃さない。
「人は変わりやすい生き物です。それゆえ、感情も変わりやすいです。
誰だって綺麗な感情のまま一生を終えることはありません。
不安になったり、怖くなって暴走したりします。でも心の底にある
感情は綺麗なままだと私は信じています。
それに体は正直です。
あなたは、禁術の書を手にとって実行した。
それは少なからず、ルイさんの願いを聞き入れたいという気持ちがあったんだと思います。その後の罪を覚悟して。あなたは憎しみの感情を持ちながら
禁術を行ったんですか?」
私が言い終えるとナグモさんは涙を流しながら謝罪する。
「ごめんさない、ルイ、ごめんなさい、カズハ。」

「私たちの出る幕なかったね」
「そうですね、ミズキ様」
俺たちはなにもしないまま解決してしまった。

その後ナグモ様は正気を取り戻したのか物凄い勢いでカズハ様に謝っていた。

一難去ってまた一難、あったりしないよな?
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