妖の街で出会ったのは狐の少年でした
94話 紛い物
それからしばらく経って、ある朝俺は違和感を感じて、少し早めに目が覚めた。
体は少し重く、重力を感じる。
「嘘、だろ」
狐の耳がなく、人間の耳に戻っていた。
そこにあったはずのものがなくなっている。
「尻尾がない、」
(まさか)
俺は浴衣のまま部屋を飛び出し、ナグモ様の部屋へ。
俺は無礼も承知で扉を開け、部屋に入る。
「ナグモ様!」
応答はない。
「ナグモ様」
おそるおそる体に触れた瞬間、まだほんのりと暖かい。
亡くなってからまだそんなに経っていないことがわかる。
俺は、ナグモ様の前で正座する
「ナグモ様、俺を見つけてくれて、信じてくれて、ありがとうございました」
俺はそう呟き深く座礼する。
ナグモ様が亡くなったことはすぐに宿中に広まりお葬式の手配がされた。
俺はカズハ様の部屋へ。
「ロク、どうしよう、簪が、」
カズハ様の手のひらには割れて粉々になった簪が。
「ロク、その姿、」
困惑する表情を浮かべている。
「所詮、俺は紛い物だったという訳です」
自責なのか自嘲なのか俺にもわからない
「え、」
「すみません、忘れてください」
そう言ったロクは悲しい顔で笑った
「ロクは、ロクだよ」
気がついたらそう口に出していた。
「正直、私は生粋だろうか紛い物だろうがどうでもいい。
人間でも妖でもどちらでもなくてもあなたは」
だんだん声が大きくなる
ー止まらなきゃー
「私の、信頼できる使いだよ」
ー余計なことを言う前にー
ー生粋だろうか紛い物だろうがどうでもいいー
その言葉はなぜか俺の胸に刺さり、浸透する。
カズハ様にとってどうでもいいことで俺は悩んでいたのか。
自然と口角が上がる。
ー信頼できるー
俺はとっくの昔に認められていたのか
「カズハ様、ありがとうございます」
俺は今とても情けない顔をしているんだろうな。
「あなたは人間に戻る。」
「え、」
あの日、唐突にナグモ様は言った。
聞き間違いであってほしいと思った。
「今、なんと」
「あなたは私が死んだら人間に戻る」
聞き間違いではなかなった。
所詮、俺は紛い物でしかないんだ。
「私はルイの家系の者ではない。家系の者でも失敗なく成功させることができないことが
部外者の私が完璧にできるなんてことはない。難易度が高ければ簡単なんてことはない。あなたを妖にする術の難易度はとても高かった。あなたを妖にしてすぐに察した、
失敗したって。外側から見て完璧に見えるものほど内側はとても脆い。内側が崩れたら外側が崩れるのも時間の問題。」
「大体、分かりました。」
「物分かりが良くて助かる」
「ねぇ、私がいなくなったらカズハのことよろしく」
片膝をつき、頭を垂れる
「はい」
ナグモ様は柔さな声で言った
「わがままになってもいいんだよ」
ナグモさんのお葬式は滞りなく行われた。
参列したにも関わらずいまいち実感が湧かない。
お葬式が終わったその日の夜。
喪服を着替えいつもの服装で私の部屋にいるロクに気になっていることを聞く。
「あの、簪って、」
「簪は妖力で作ります。俺が人間になって妖力がなくなったので形が保てなくなったんです」
「そっか。
失礼なこと聞くけどロクっていくつなの?」
「俺、ですか?俺は妖になったのは14の時です。そして2年後カズハ様と出会いました。」
「・・・ん、14、その2年後ってことは」
「ええ、人間のままで歳を重ねていればオレは今20です」
「え!?」
まさかの年上ということに衝撃だ。
「まぁ体の成長が止まっていたと言っても過言ではないので、側から見れば13、14あたりでしょう。」
「そう、なんだ」
私、年上の人にタメ口で話してたんだ。
「ごめんなさい私、あなたにずっと失礼を」
失礼?駄目だ。心当たりが多すぎる。
「だ、大丈夫ですよ。気にしないでください。というか主が従者に敬語なんておかしいでしょう?」
「そう、かな」
「それに今までタメ口だったのに急に敬語で話をされても戸惑いますし」
「ロ、ロクがいいなら。あの、ロクの時間は止まってたでしょ?」
「え、はい」
「私が年上ってことでいいの?」
「それで俺は構いません」
「そっか」
体は少し重く、重力を感じる。
「嘘、だろ」
狐の耳がなく、人間の耳に戻っていた。
そこにあったはずのものがなくなっている。
「尻尾がない、」
(まさか)
俺は浴衣のまま部屋を飛び出し、ナグモ様の部屋へ。
俺は無礼も承知で扉を開け、部屋に入る。
「ナグモ様!」
応答はない。
「ナグモ様」
おそるおそる体に触れた瞬間、まだほんのりと暖かい。
亡くなってからまだそんなに経っていないことがわかる。
俺は、ナグモ様の前で正座する
「ナグモ様、俺を見つけてくれて、信じてくれて、ありがとうございました」
俺はそう呟き深く座礼する。
ナグモ様が亡くなったことはすぐに宿中に広まりお葬式の手配がされた。
俺はカズハ様の部屋へ。
「ロク、どうしよう、簪が、」
カズハ様の手のひらには割れて粉々になった簪が。
「ロク、その姿、」
困惑する表情を浮かべている。
「所詮、俺は紛い物だったという訳です」
自責なのか自嘲なのか俺にもわからない
「え、」
「すみません、忘れてください」
そう言ったロクは悲しい顔で笑った
「ロクは、ロクだよ」
気がついたらそう口に出していた。
「正直、私は生粋だろうか紛い物だろうがどうでもいい。
人間でも妖でもどちらでもなくてもあなたは」
だんだん声が大きくなる
ー止まらなきゃー
「私の、信頼できる使いだよ」
ー余計なことを言う前にー
ー生粋だろうか紛い物だろうがどうでもいいー
その言葉はなぜか俺の胸に刺さり、浸透する。
カズハ様にとってどうでもいいことで俺は悩んでいたのか。
自然と口角が上がる。
ー信頼できるー
俺はとっくの昔に認められていたのか
「カズハ様、ありがとうございます」
俺は今とても情けない顔をしているんだろうな。
「あなたは人間に戻る。」
「え、」
あの日、唐突にナグモ様は言った。
聞き間違いであってほしいと思った。
「今、なんと」
「あなたは私が死んだら人間に戻る」
聞き間違いではなかなった。
所詮、俺は紛い物でしかないんだ。
「私はルイの家系の者ではない。家系の者でも失敗なく成功させることができないことが
部外者の私が完璧にできるなんてことはない。難易度が高ければ簡単なんてことはない。あなたを妖にする術の難易度はとても高かった。あなたを妖にしてすぐに察した、
失敗したって。外側から見て完璧に見えるものほど内側はとても脆い。内側が崩れたら外側が崩れるのも時間の問題。」
「大体、分かりました。」
「物分かりが良くて助かる」
「ねぇ、私がいなくなったらカズハのことよろしく」
片膝をつき、頭を垂れる
「はい」
ナグモ様は柔さな声で言った
「わがままになってもいいんだよ」
ナグモさんのお葬式は滞りなく行われた。
参列したにも関わらずいまいち実感が湧かない。
お葬式が終わったその日の夜。
喪服を着替えいつもの服装で私の部屋にいるロクに気になっていることを聞く。
「あの、簪って、」
「簪は妖力で作ります。俺が人間になって妖力がなくなったので形が保てなくなったんです」
「そっか。
失礼なこと聞くけどロクっていくつなの?」
「俺、ですか?俺は妖になったのは14の時です。そして2年後カズハ様と出会いました。」
「・・・ん、14、その2年後ってことは」
「ええ、人間のままで歳を重ねていればオレは今20です」
「え!?」
まさかの年上ということに衝撃だ。
「まぁ体の成長が止まっていたと言っても過言ではないので、側から見れば13、14あたりでしょう。」
「そう、なんだ」
私、年上の人にタメ口で話してたんだ。
「ごめんなさい私、あなたにずっと失礼を」
失礼?駄目だ。心当たりが多すぎる。
「だ、大丈夫ですよ。気にしないでください。というか主が従者に敬語なんておかしいでしょう?」
「そう、かな」
「それに今までタメ口だったのに急に敬語で話をされても戸惑いますし」
「ロ、ロクがいいなら。あの、ロクの時間は止まってたでしょ?」
「え、はい」
「私が年上ってことでいいの?」
「それで俺は構いません」
「そっか」