妖の街で出会ったのは狐の少年でした

99話 自分の気持ち

数時間前、
「ごめん、昨日急に帰ってこいって、連絡があってきてみたらいきなり結婚
しろって言われて、正直オレもなにがなんだか。」
「そう、なんだ」
ジュンもよくわかってないんだ。
「ジュン、いきなりで失礼だけど、私はあなたとは友達ってだけで
恋愛感情はない。」
ジュンはクスリと笑い、
「それはオレもだよ。それにオレが好きなのはナツキだし」
「あ、ごめん。私、余計なことしちゃった」
「余計?」
「実はナツキに招待状だしちゃって」
「あー、まぁその誤解はすぐに解くよ。」
ジュンは天を仰いだがすぐに向き直った
「冷静だね」
「冷静?馬鹿言うなよ。オレは今すげー怒ってるんだ。」
「ごめん、そうだよね。いきなり私と結婚なんて」
「それもあるけど、オレはオレの親友達の仲を引っ掻き回した父を許さない。
私利私欲のためにオレ達を売ったようなものだ」
「私利私欲?」
「えっと昨日、その父がオレとカズハが結婚したら大金が手に入るって言ってて」
「大金ってなんで私と結婚?」
「知らないのか?かなり有名な話。家元のご夫妻の遺産をカズハが相続するって話」
「え、なにそれ?初耳なんだけど」
もしかして、ロクは知ってたの?
「ご、ごめん。オレから聞きたくなかったよな。」
ジュンは罰が悪そうに言う
「いや、最終的には知ることになるからいいよ、気にしないで。」
「カズハはこの結婚望んでないだろ」
「う、うん」
「オレも。だから、この式を壊そうと思って」
「ジュン。あなた天才」
私の顔はものすごく悪い顔になってるだろうな
「そのジュンの服ってここの?」
ジュンは新郎が着るような白ではなく黒の
スーツを着ていた
「これ?これ親父の。姉さんに頼んでそれのサイズに仕立ててもらったらしい」
「そうなんだ」
「そういえば私には何もないの?」
「え、あー。馬子にも衣装?」
「まぁ、予想はしてたけど」
「だって、言われたい相手はオレじゃないだろ」
気づいてたんだ。
「ジュン」
「ん?」
「ありがとう」
「ああ」

そっか、カズハとジュンの結婚だったんだ。
「永遠の愛を誓いますか?」
好きだったよ、ジュン。
「誓いません」
瞬時に会場がどよめく
(え?)

「オレはこの結婚には反対だ」
「私も、誓いません」
「オレは私利私欲のためにオレの親友たちの中を引っ掻き回した父を絶対に許さない」 
「え?ジュンくんが自分から言い出したんじゃないの?」
親戚の1人が口を出す。どうやらオレが言い出したことになっているらしい。
「いいえ、オレはカズハのことを恋愛対象として見ていません。
それに昨日いきなり帰ってこいと言われ
なんだと思えばこれですよ。」
「聞いていた話と違うんだが」
「説明してくださる?」
親戚達は説明を求め父に問い詰める。
「ジュン、親の顔に泥を塗るつもりか」
父は俺に矛先を向けるが
「何言ってるんだ。オレの意見を聞かず勝手にやったことだろ。
自分で撒いた種は自分で取れよ」
「な、父親に向かって口答え」
「父親じゃない、新婦がカズハだってわかった瞬間、決めたことだ。あなたとは絶縁させていただきます。それにオレは添い遂げたいと思っている相手がいます。」
別の意味で会場の声が上がる。オレはナツキの前で片膝をつき、手を差し出す。
「ナツキさん。オレは仕事上、あなたに寂しい思いをさせてしまうかもしれません。
でも、オレはいつまでもあなたを愛することを誓います。オレと添い遂げてくれますか」
ナツキは涙を流しながら
「私もあなたを愛することを誓います。あなたと添い遂げます」
オレの手をとる。
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