恋桜~あやかしの闇に囚われて~
二
「まったくミツルはさぁ、酒とツマミばっかり持ってきてんじゃねえよ」
「まぁまぁ。こんな立派な桜を独占して花見ができたんだから、結果としてよかったじゃない?」
満開の桜を見上げる。半ば自棄になっているのか、延々と管を巻く和真を軽くあしらい、ミツルは新しいビールの缶を開けた。
自慢じゃないが、酒だけはたくさん持ってきている。人生全般そうだけれど、動画製作だって楽しくやらなきゃ意味がない。日々を刹那的に生きることにまったく忌避感のないミツルは、酒や女に目がなかった。夜桜の下での酒なんて最高だ。
「今夜は飲もうぜー。たまには男だけの飲みもいいもんだ」
「ったく、たまには、かよ。おまえクズなのに、なんでそんなにもてるんだ」