恋桜~あやかしの闇に囚われて~
 高校の同級生だったミツルとは卒業以来疎遠になっていたが、和真のアルバイト先のカラオケ店に偶然ミツルがやってきたことで友人関係が復活した。そのときは素直にうれしかったが、今となってはよかったのか悪かったのかわからない。

「ホラー系の動画ってそんなに受けてるのか?」

「さあ……」

「じゃあ、ミツルはなんで始めようと思ったんだよ」

「単に好きだから? ゾワゾワチャンネルくらいの動画なら、簡単に作れそうじゃない?」

 ミツルは都市伝説の類を扱う有名な動画配信者の名前を出した。簡単そうに見えるけれど、実際に企画から編集まで金が取れるレベルでやろうとしたら、かなり大変なのではないかと和真は思っている。それをいい加減な性格のミツルができるとも思えない。

 今回も結局、都市伝説の下調べから車の運転までミツルのいいように使われている。それでも、それを嫌みに思わせないあっけらかんとしたところが、ミツルのヒモとしての才能なのかもしれなかった。

「そろそろ日女薙トンネルだぞ」

「おお、ついに俺の動画デビューの地が近づいてきたか」
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